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Aino Fairy Tales( チェンバレンの「アイヌの昔話」)を見るにあたって
 チェンバレン(B.H.Chamberain)のAino Fairy Tales はちりめん本ではなく平紙の本だが、弘文社の出版物の中でも貴重なものである。 チェンバレンは多くの優れた訳者の中で最も長谷川武次郎と関係が深く、かれの仲介で弘文社で本を出した人も多い。チェンバレンは明治6年(1873)に来日して以来40年近くも滞在し、『日本事物誌』をはじめ、『古事記』の英訳など多くの重要な日本研究を成し遂げた人である。
 彼は先に見たように「日本昔噺」も4冊訳しているが、J.バチェラーと共著でアイヌの研究もしており、幌別にバチェラーを訪ねてともにアイヌの昔話の採集もしている。その中の3編を挿絵入りで弘文社から出したのだ。チェンバレンは『日本事物誌』にもアイノと標記している。

 本学には一巻のみしか所蔵していないのだが、本来は三巻本として出版された。

 No.2 は「鳥たちの宴」という短い話である。表紙は同様にアイヌの模様で、表紙裏に髭のあるアイヌの男性が楽器を持ってこの話を語っている絵がある。
話は単純で、宴を開いた鳩の夫妻が多くの鳥を招いたのにカラスを招くのを忘れた。カラスは怒って宴たけなわの時に石をくわえて来て落とし、せっかくの宴がさんざんなものになるという話。
裏表紙の前にアイヌ・コタンのスケッチがあるのが珍しい。中の絵は永濯と思われるが、このスケッチの筆致はそれとは違う。もしこれがチェンバレンの採集メモだったらと思うと胸が躍る。弘文社の広告にはNo.2 は載っていないことが多い。

  No.3 は「妻をなくした男」という話。これも永濯の絵でアイヌの伝統的模様で表紙を飾っている。 ペンリという男が、山へ薪を取りに行ったまま帰ってこない妻を探しに行く。そこで樫の木の精の老人に会い、天空の都へ行く金の馬を与えられ、それに乗って天空の都へ行く。都で教えられた通りに振る舞い、少し知能の足りない鬼にさらわれていた妻を取り戻して帰り、以後幸せに暮らす。 チェンバレンの「アイヌの昔話」はまとまったものではないが、日本人のアイヌに対する関心がまだ薄かった時期に、現地で採集された話として貴重なものである。これらを出版した長谷川武次郎の見識と英断は賞賛されてしかるべきものと考える。


No. 1 The Hunter in Fairy Land
No. 2 The Bird's Party (本学未所蔵)
No. 3 The Man Who Lost His Wife(本学未所蔵)
 
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